ホーム > 総会・講演会・学会 報告記

総会・講演会・学会 報告記

5-D Japan 第3回総会報告記

5-D Japan 第3回総会報告記

西宮市開業 石川 亮

さる平成24年3月11日第3回5-D Japan総会がシェーンバッハサボーにておよそ200名の参加を得て盛大に開催されたので、報告させていただきます。
ファウンダーの石川知弘先生が挨拶に立たれた後、前年の同じ日に起きた東日本大震災の犠牲者に参加者全員で黙祷を捧げ、ご冥福をお祈りした。

sample_01

会員発表

矢原憲一先生(石川県開業)は、「機能と審美を考慮した上顎前歯部インプランと補綴のマネージメント」で、素晴らしい治療結果を得た2症例を通して、上顎前歯部インプラント治療の成功は、審美的側面のみで評価されるべきではなく、機能的側面と治療結果の永続性にも目を向けるべきである。それらを達成するために、多数配慮すべき項目から、インプラントに置換されるに至った歯牙の喪失の原因を十分に考察することと、下顎の前歯部とのカップリングを改善することの重要性についてフォーカスを絞り、発表された。
石川亮(兵庫県開業)は、「広汎型歯周炎患者に対する再生療法と補綴治療のコンビネーション」で、再生療法の結果次第で補綴設計が変化するため、従来の歯周補綴よりもさらに慎重な再評価を経て、最終的な補綴設計を決定することが求められるとの私見を述べさせていただいた。(座長;石川知弘先生、北島一先生)
松島正和先生(東京都開業)は「顎関節の病態と顎機能に調和した補綴物の製作」として、顎関節症の病型分類から治療時に問題を引き起こさない補綴物製作のポイントを解説された。提示された豊富な動画は、顎運動を理解するためにも、臨床で診断するためにも非常に有用だと感じた。咬合器のセッティングから、補綴物を口腔内で調整するまでの一連の流れは、参加者にとってブラックボックスを解き明かす一助になったと思う。

sample_01

米澤大地先生(兵庫県開業)の「下顎位を考慮した前歯インプラント治療計画」では、自身の”SAC分類の咬合版”に則り、前歯部インプラント修復を咬合の面からSimple/Advanced/Complexにクラス分けして診断することの重要性を説いた。矯正、インプラント、咬合、審美の各分野を見事にこなす、”ひとりMulti disciplinary approach”は氏の真骨頂だと思わせる発表だった。(座長;船登彰芳先生、殿塚量平先生)

鈴木真名先生と南昌宏先生の症例検討会「Micro dentistryを極める」(司会;北島一先生)

第1部 マイクロスコープ治療を理解する

まず、南昌宏先生が登壇され、Micro dentistryの概念を総論的に話された。ルーペによる視野拡大も含めてMicro dentistryと考えており、まず始めに導入し易いのは観察すると使い方である。視覚情報が増えることによるメリットが診断に役立つこと、そして自身の研究と過去の論文を引用しながら、支台歯形成など補綴分野における視野拡大のメリットについて詳述された。 つぎに鈴木真名先生が登壇され、Micro dentistryの基礎の部分を、歯周初期治療における衛生士業務を通してお話しされた。衛生士業務に於いても、医師と同様に顕微鏡の使用が有効であることを臨床例により示された後、顕微鏡のポジショニングについてミラーテクニックや、患者の頭位とともに部位別に動画も交えて詳述された。私個人としては、セッションの冒頭に提示された素晴らしい歯間乳頭再建術の動画を見ながら「スローに動かして、一本のラインを引くことこそが技術である」と述べられていた事が印象に残った。

sample_01

第2部 マイクロスコープ治療のペリオ、インプラント治療への応用

アドバンスの講演として鈴木先生は、インプラント周囲の歯肉退縮の分類と解決法について講演された。歯間乳頭の高さを得るためには、まず歯肉の厚みが必要であるということと、結合組織移植が修復と再生のコンビネーションによって治癒するのではないか、という考えを示された。鈴木先生の分類によっても、撤去も考慮すべきとされるような症例であっても、患者の希望により粘り強く、理詰めで軟組織の再建が計られていた。まさに世界的な第一人者である鈴木先生だからこそ到達出来る領域の症例だと感じた聴衆は、私だけでは無かっただろう。
南先生によるアドバンスの講演は、歯周外科治療に於ける一次閉鎖を達成するためのテクニカルポイントの解説で始まった。一次治癒達成に必要な縫合糸の太さと、縫合のテンションについての論文や、根面被覆時にマイクロサージェリーの使用がマクロに比べ、血管の新生と再構築に有効とする論文も示された。次に様々な材料による根面被覆が示された。とくに小帯切除と根面被覆の複合手術における動画とシェーマは、大変興味深いものだった。マクロの視野では決して達成出来ない事は勿論、術式自体が独創的だった。最後に一次治癒を達成出来るか否かにより、治療結果が左右される再生療法の症例が示された。「アドバンスの症例を手掛けるためには、実は基本を忠実に守ることが大切である。」というのは鈴木、南両先生の共通した意見だった。

最後に福西一浩先生から挨拶があり、盛況のうちに閉会した。参加された先生には実に有意義な一日になったようだった。次回2013年3月は、月星先生と福西先生の討論会の予定である。

sample_01

Dr. Christian Coachman 講習会&ハンズオンコースレポート

5-D Dr. Christian Coachman
講習会&ハンズオンコースを受講して

Premium Dental Care
高井基普

sample_01

~ はじめに ~

FacebookやTwitterをはじめとするSNS(Social Network Service)は、社会そのものを一変しました。世界との距離を瞬時に縮めてくれたと言っても過言ではありません。
自分がFacebookを始めて間もないころ、ニュースフィールドのある画像に目が留まり、迷いなくリンクをシェアしました。それは、Dr. Christian CoachmanのDSD(Digital Smile Design)とうものでした。デジタル写真の美しさ、写真の規格化、プレゼンテーションの質の高さ、どれにおいても注視すべきものがあったのです。そんなある日、Dr. Christian Coachmanのハンズオンコースが5-D Japan 主催で行われると聞き胸が躍りました。
そして、去る2012年11月27・28日、東京・白鳳本社10Fセミナー室にて開催されました。初日講演会、二日目ハンズオンコースとして行われたその内容を網羅的にご報告させていただきたいと思います。

sample_01sample_01

その1 DSD(Digital Smile Design)

sample_01

初日の講演は、多くの美しい臨床例を呈示しながら、DSD(Digital Smile Design)を日常臨床でどのように用いているかの解説から始まりました。そのシステムは、決して複雑なものでなく、Mac PCのアプリケーション・ソフトであるKeynoteを駆使したものでした。そのKeynoteに撮影した写真を取り込み、上顎6前歯の歯冠サイズ・位置・歯軸およびバランスの評価、口唇や顔貌とのバランスの評価などを行っていきます。

後の受講生からの質問に対するDr. Christian Coachmanの回答で解ったことなのですが、DSDはあくまでも総義歯などで行う前歯の人工歯配列をデジタル画面上で行うに過ぎず、画一的なルールなどは存在せず、あくまでも既存のルールを参考にしながら応用するツールなのだと表現されました。

しかしながら、そこには過去にはない明確な技術が存在することを自分は即解しました。

確かに総義歯であれば、ある程度の自由度をもって歯の位置を設定し、実際に目で見ながら前歯のポジションを評価するタイミングは必ずあります。しかし、天然歯が散在する場合においては、主に診断用ワックスアップを口腔単位で行い顔貌は顔貌写真で評価するという別々の手段を統合しながら行うしかない という側面がありました。つまり、純然たる総合的な術前診断を簡易的にする術はなかったのです。咬合再構成のすべての起始点がインサイザルエッジ・ポジションの決定であるにもかかわらずです。(もちろん複雑なシステムは存在していましたが、煩雑で専門性が高すぎました。)

これは、患者の満足度が最も影響する審美のディテールが、歯科医師と技工士の経験と感覚に依存しすぎること、術前評価や診断が曖昧なまま治療が開始されているという現実を明確にしました。
つまり、このDSD (Digital Smile Design)は、審美修復や咬合再構成症例などの総合診断には欠かせないツールである可能性が高いのです。

その2 Digital Dental Photography

sample_01sample_01

DSD(Digital Smile Design)の解説が進む中で、多くの受講生が感じていたことが確かに存在していました。それは、どのようなデジタルカメラを用いてどのような規格写真を撮っているのだろうという疑問でした。安定した写真精度、つまり、方向・角度・色などは診断や評価に大きな影響を与えうると感じるからです。

これを感じ取ったDr. Christian Coachmanは、2時間ほどを割いてこの疑問に答えてくれました。

デジタルカメラおよびフラッシュ・システムの設定を解説、詳細はFBのDigital Dental Photographのアルバムを参考にしてほしいという程度にとどめられました。それ以上は好みもありますし、こだわりもそれぞれです。そして、器材も安価なものばかりでもありませんので、個々の判断に委ねられました。適切な判断だと感じました。

そんな中、特記すべき留意事項を以下に列挙します。

*顔貌写真・口腔内写真を撮影する環境を一定にする(患者は立位を基本とする)
*患者自身に口角鉤を持ってもらう
*比較的広域で撮影し、トリミングを用いてリサイズする
*重要な事は、カメラのレベルでなく、バウンサー等を用いた光量の調整である

その3 Artificial Prosthesis Gingiva

sample_01

口腔インプラントを用いた歯科治療が急増し、インプラントという言葉そのものにある程度の社会的市民権が得られたようにも見受けられます。一方、術後トラブルも急増し、より複雑な術後トラブルの再治療等も散見されるようになりました。
インプラント補綴術前処置である骨造成等の外科処置の限界も、術者の技術や経験に因らない現実もあります(患者の全身的健康状態や心理的背景、経済状況など)。

その中で、失われた歯周組織を補綴的に再建するインプラント補綴の講義およびシュミレーション模型を用いたハンズオンが二日間にわたり開催されました。

講演では、多くの臨床例が提示され、Artificial Prosthesis Gingiva がどのような背景から用いられるようになりどのように進化してきたのかという歴史も示していただきました。

Artificial Prosthesis Gingivaにおいて、注視すべきことは審美性と清掃性になります。歯やインプラントとは違い、形態そのものに変化を生じやすい歯周組織に呼応し対応する必要性から、口腔内直接法を完成させたのはある意味で必然であったのかもしれません。

その完成されたArtificial Prosthesis Gingivaは、まず歯肉との境界部がほとんど解りません。溶け込んでしまうようなフィニッシングラインの設定とデザイン、形態と色調の調和が完璧なのです。その美しさから、これまで外科的再介入で苦しんできた患者の喜びは想像に難しくありませんでした。

清掃性についても、術者可撤式(スクリューリテイニング)であることは然ることながら、患者自身がフロスを用いて行えるような配慮もされていました。隣在歯との接触部位においてはフロスが抵抗をもって貫通するのがひとつの指標ということでした。

次いで、構造的課題、つまりマテリアルセレクションやフレームワークデザインについても、多くの経験から得られた解決策・破折した場合の再介入方法等も提示されました。

sample_01sample_01

そして、この術式が複雑な歯周組織欠損を伴う症例における部分欠損審美インプラント治療の選択肢のひとつになりうることを強調されました。場合によっては外科術式が変わる(頬舌的にフラットな顎堤を形成する)ため、術前からトップダウンで行わなくてはならないことも示されました。歯周組織再建とは全くコンセプトや方向性が違うのです。

臨床家である我々が、高い術後安定性と治療再介入の必然性を同時に理解していれば、Artificial Prosthesis Gingivaが、インプラント治療の選択肢のひとつとして欠かせない術式であることを即座に理解できるような講義および実習内容であったと言えるでしょう。

~ 総 括 ~

sample_01

今回の講習会およびハンズオンで、Dr. Christian Coachmanがもっとも強調されていたキーワードは"情報の共有化"でした。専門医同志・セラミスト(DT)・デンタルスタッフはもとより、患者との視覚的情報共有がこれからの臨床には欠かせないものだという事を強調します。

患者をクライアントとして捉え、プレゼンテーションを提示することでスムーズに治療に移行できるのです。

そして、"収益性の高いプロトコール"は、エラーや調整を減らし、貴重な時間を創りだします。その時間は余裕を生み、患者との信頼関係をよりよいものにしていくことになるでしょう。

そして、患者の状況に応じた柔軟な対応(臨床応用力)を我々が備えることで、信頼は確固たるものになるはずです。口腔インプラント治療においては、Artificial Prosthesis Gingivaがその代表例と言えるでしょう。

"情報"とは決して一方的なものでなく、お互いがともに成長し繁栄していくために"共有"すべきものであり、これからもその"情報"を"共有"できるような関係を構築できることを願っていると締め括られました。

~ 終わりに ~

今回行われたDr. Christian Coachmanの講演会およびハンズオンコースは、すべての参加者にとってとても有意義なものであったと感じています。多岐にわたる講義や実習が、それぞれに感受性の高い受講生に対し、柔軟に角度を変えて伝わっていたからです。
そして、個人的ではありますが、Dr. Christian Coachmanの品格ある臨床への情熱を肌で感じとることができたことは、臨床家としてのRoadmapが明確になったといっても過言ではありません。
最後になりますが、このような貴重な機会を与えてくださった、Dr. Christian Coachman、5-D Japan ファウンダーの先生方、関係者の方々に厚くお礼を申し上げたいと思います。

1 st BIOMET 3i European Symposium A Global Eventレポート

1 st BIOMET 3i European Symposium A Global Event
ヨーロッパ最新インプラント治療の潮流にふれて
---There is an entire world out there---

矢原憲一
矢原歯科医院

<はじめに>
記念すべき第1回目となるBIOMET 3i European Symposium A Global Eventが2012年1月13,14日,スペインの首都マドリッドにて開催された。

sample_01

野々山先生スケッチ マドリッドより車で1時間のところのトレド(世界遺産)風景

このシンポジウムは第11回スペインシンポジウム,第2回北欧,中央ヨーロッパシンポジウム、および第1回アジア・パシフィックシンポジウムの共同開催ということで,46名のワールドクラスの演者およびモデレーター、20か国以上から2500名を超える参加者が集った。
著者自身,初めて第96回米国歯周病学会(AAP)に参加した際,世界の第一線に君臨する先生方のスライドやプレゼンテーションから,大胆な治療計画と文献に裏付けらた緻密な理論や治療手技に圧倒され、それまで日本国内で粛々と講演会に参加し満足していた私にとって、海外に目を向ける大きなきっかけとなった。
そして今回,著者も所属する5-D JAPAN ファウンダーである船登彰芳氏(石川県開業)と石川知弘氏(静岡県開業)が招聘されたこともあり,ファウンダーのメンバー全員(北島一氏:静岡県開業,南昌宏氏・福西一浩氏:ともに大阪府開業)とともにスペイン行きを決めたのである。
また日本から50名以上のBIOMET 3i ユーザーの先生方がツアー参加されていた。

この季節,池の水も凍るほどの寒さであったが,幸い滞在中は快晴が続き,到着翌日はマドリッド中心部のスペイン広場や美術館、世界遺産のトレドへの観光も堪能でき,ヨーロッパの歴史ある建物や独創的な絵画や彫刻などの美術品を目にすることができた。

<シンポジウム一日目>
Prof .Dr.Jaime A.Gil (ヨーロッパ審美歯科学会元会長・スペイン)のスピーチからシンポジウムはスタートした.
先陣を華々しく飾ったのはDr.Ueli Grunder(スイス)の「審美領域におけるインプラント治療-20年以上経過症例からの報告-」と題した講演であった.
今回提示された多くの長期経過症例が,審美領域におけるインプラント唇側の硬組織・軟組織のボリュームや厚みが,術後の長期安定に影響するという多くの論文の礎になっていることが理解できた.10年以上前から変わらず,これから先も何ら変わることはないであろうGrunder氏のコンセプトは特に印象深かった.
また多くの成功症例の陰に,氏が経験した失敗症例や歯肉退縮症例を提示していただけたことは,経験の浅い著者にとってかけがえのない情報の共有となった。

sample_01

またBiomet 3i の新製品で,日本でも今春発売予定であるエンコードシステム(ヒーリングアバットメントを口腔内でスキャンすることで,印象採得することなくアバットメントを作製できるシステム),オッセオタイト2(スレッドデザイン変更よる初期固定性の向上と表面積増加の進化を遂げた新インプラント)がいち早く海外の臨床で機能している報告もあり,日本での発売に期待をもたらす講演が多数あった.


<シンポジウム2日目>
Dr.Francesco Amato(イタリア)は審美領域において重度のアタッチメントロスを生じた症例に対し,論文を元に顔面~口唇~インサイザルエッジ~歯肉ラインなどから治療ゴールを設定するとした.そこから天然歯保存のため歯周治療や矯正治療,インプラント治療と様々な治療オプションを駆使したインターディシプリナリー治療の結果は圧巻であった.


<船登・石川両氏講演>
まず昨年の東日本大震災について触れ,スペインをはじめヨーロッパ各国から多大な支援をいただいたことへの感謝と,日本国民は辛抱強く復興に向け歩み続けていること,加えて「Pray for Japan」とのメッセージを送った.
船登氏の講演では約10年前に行った前歯部抜歯即時埋入のケースを提示し,現在のCT画像から術後の唇側骨の吸収や軟組織の退縮を生じた原因について検証した.
それに基づき現在,「4-Dコンセプト」として確立されている3次元的な埋入ポジションに加えて,抜歯から補綴物装着までの各ステップを行う「Timing」の重要性について詳細に解説した.
石川氏の講演では,歯槽堤保存の一手法として,支台歯利用が困難で保存可能な天然歯根をあえて軟組織下に埋入する「ルートサブマージェンステクニック」を,歯槽堤の硬組織増大の方法としてチタンメッシュとコラーゲン膜を用いた水平的・垂直的GBR法を紹介し,前歯部・臼歯部に重度骨欠損を生じている多数歯欠損症例に対し、審美的・機能的に予知性の高い治療結果を得られた症例を提示された.

sample_01

今回のシンポジウムのトピックとして,
①抜歯後即時埋入術式と術後評価
②審美領域における唇側骨保存と増生の科学
③全顎欠損に対するフルアーチインプラント治療
④Peri-Implant Diseasesに対する予防と治療法
⑤デジタルデンティストリーの新しい治療の流れ
などであった.
特に前歯部抜歯即時埋入に関する講演は非常に多く,10年以上の長期経過症例から臨床データも集積され,そのプロトコールは確立されてきていると感じた.しかし成功症例の陰に多数の審美的経年変化の失敗症例が散見されていることから適応症例の選定はもちろん,生物学的な許容量(限界),術者の経験や技術的な限界などを過信しないこと.真摯に患者利益のために行われるべき治療であると感じた。


<おわりに>
2回目の海外シンポジウムに参加して感じた海外から見た日本の良さとして,歯科書籍・雑誌,インターネットを利用した論文の閲覧などから日本国内で収集できる情報にタイムラグはほとんど感じ得なかった。
これは各研修会,各講習会の講師達が率先して海外研修に出向き、そこで得た最新の技術、知識,情報を惜しまずに我々受講生や後輩達に伝達していただいている賜物であると感じた。
しかし,現地に行かなければ絶対に感じ得ない演者達の情熱や会場の興奮,海外のDr達との交流は帰国してからも日々の診療で大きな刺激になり続けている。
また二人の日本人の講演は非常に堂々としており,英語での講演はもちろん,治療結果のクオリティの高さに聴衆は魅了されていた。著者をはじめ,今回日本から参加された先生方も,同じ日本人として誇らしく会場をあとにすることができたのではないだろうか。

sample_01

AO2012 in Phenixレポート

AO2012 in Phenix 報告記

吉松 繁人 久留米市開業
アドバンス3期卒業生

sample_012012年3月1日から3月3日の3日間、アリゾナ州フェニックスのコンベンションセンターにてAOのannual meetingが開催されました。
今年のテーマは「technology to practice」、その名の通りまさにインプラント時代が変革を迎えようとしていると感じさせられるプログラムでした。

sample_01第一日目 朝 Corporate forumが開催され、11社が競合するように新製品の紹介や新しいコンセプトのレクチャーを行った。素晴らしい演者ばかりでどれも聴講したかったが今回はBIOMET 3I, KEYSTONE dental, Zimmer dentalを選びました。

sample_01Biomet 3iでは"Soft tissue contouring Surrounding immediate placement in aesthetic zone"の演題でDr. AlfonosoとDr. Federicoが掛け合いをしながらプレゼンテーションをするスタイルで行い、前歯部審美インプラント治療を行うときに歯槽骨の唇側に遅延吸収型の骨補填材を用いることが有効であると講演されました。

sample_01Zimmer dentalではVertical Bone augmentation Techniques incorporating CurV InnovationでDr.Salamaが垂直的に骨造成をするための新しいマテリアルとして歯槽骨の形態に合わせたメンブレンの症例を提示した。DR船登、DR石川の症例、論文を引用し彼らのような素晴らしい仕事をおこなうために開発を行ったと紹介しました。

sample_01Keystone dentalではDr.ChristerがBioactive membranes for Guided Bone Regenerationの演題で講演した。Gore membraneから現在のmembraneの開発の歴史とこれから求められるmembraneの理想像と生体親和性の高いdynamatrixを紹介していました。
ランチタイムにはブース巡りをおこなった。クインテッセンス出版のところには4-Dコンセプトが目立つように正面の真ん中にたててあり、ついつい私も購入させていただいた。帰国後船登先生、石川先生にサインをおねだりしようと不純な動機が芽生えてしまいました。
午後からは Dr.Marco, Dr. Nigel, Dr.Salama, Dr watanabe,Dr.Ole , Dr Homaの6人で opening symposiumが行われた。テーマは前歯部の審美障害のある患者のインプラント治療で治療のプランニングから術前処置(軟組織、硬組織)と臼歯部の垂直的な歯槽骨の造成でした。
日本から渡辺先生がNon-Grafting Solutionsというテーマで矯正治療で行う骨造成のテクニックを症例を通じて講演した。講演の最後に昨年の東日本大震災での様々な国の多くの方から支援をいただいたことに感謝をのべ、自分の医院が原発問題で被災していることを述べられると会場は厳粛な雰囲気になった。「この壇上にあるのがたくさんの人のつながりとご支援によるものである」ということをのべて講演を締めくくられました。

sample_012日目は本会場にてsurgical track とrestorative trackが同時に行われた。Surgical trackではTissue engineeringがテーマであった。Dr. Myron がTissue engineering の基礎について解説しました。続いて5人の演者はそれぞれGrowth factorを用いた治療結果と研究を照らし合わせながら症例と材料の選択についての見解を述べました。取り上げられたGrowth factorはrh PDGF-BB、EMD、rh BMP-2で、今回興味を引いたのはEMDがamerogenesisではなく血管新生に関係しているということでした。rh BMP-2はinfuseを使ってのリサーチと臨床結果の報告があり、治療術式の確立ができたと思わせる内容でした。午後はClinical innovations、Oral scientific research、Oral Clinical ResearchのsessionがありClinical Innovationの部門でWilliam R. Laney Award最優秀賞をUCLAの小川先生が受賞された。テーマは" Effect of Ultraviolet Photoactivation of Titanium on Osseointegration in a rat mode"でした。講演会場は立ち見が出るほどの盛況で現在のインプラントの表面正常における革新的なアプローチであると感じさせました。

sample_01スライドの中ではUltravioletを照射した後の各種インプラントのヌレの変化とそれに伴う細胞凝集の変化、そしてBICの変化について報告された。動画を駆使し、切片写真を用い、研究データをわかりやすくまとめられた講演でした。聴講されたドクターは非常に興味を持ってプレゼンテーションに魅入り、小川先生のテンポの良い口調に時間が経つのを忘れさせられました。
30分の講演であったためより詳しい内容を聞きたかったのか聴講者からの質問が絶えませんでした。
その他のリサーチセッションやポスターセッションでは海外で精力的に研鑽を積んでいる日本の若い先生方の発表が目立ち心強く感じました。

sample_01最終日はdigital dentistryのsessionとclosing symposiumが行われました。
今回の講演ではdigital化が歯科医院にもたらす変革、そして近年問題になっている歯科技工士の減少や資源の枯渇といった歯科を取り巻く環境の変化にも触れられ、digital dentistryが必要不可欠になるということが伝えられました。SessionではCBCTと3Dの画像の重ね合わせ、それに口腔内スキャナーを組み合わせることで歯列、補綴治療を行った後の顔貌の変化などをある程度予測することができるようになり、患者とのコミュニケーションのソースとしても重要であると述べられました。またこのSessionのkeynote speakerであるPing Fu(President and CEO, Geomagic )は現在のdigital化CADCAM技術がもたらした世の中の変化と遠隔地でのプロダクツの製作、あるいはカスタムな製品の製作といった技術を紹介し、これからの歯科治療においてますますdigital dentistryが発展していくことを示唆しておりました。

sample_01午後からはThe Art of Patient rehabilitation というテーマでsession が行われました。その中でもDr Grunderの講演が圧巻でした。Dr.Grunderは自分が行ってきた前歯部のインプラント症例を術前状態で分類し治療法を体系化し、10年以上の経過をつぎつぎと提示して会場を圧倒した。また他の演者もmultipleの欠損における審美ケースに対してdigital dentistryを駆使して行ったすばらしい症例報告を行いました。

sample_01今回の学会を通じてティッシュエンジニアリングの進歩とdigital dentistryの時代の幕開けを感じさせられた大変意義のある学会参加と感じることができmした。5-D受講生の皆様もAOのみならず、世界中の第一線の先生の講演が聴ける学会には奮って参加していただきたいと思います。そして今5-Dで学んでいることが世界の第一線であることを改めて認識していただくと明日への仕事のモチベーションがあがると私は思っています。私事ではあるが講演の前日に小川先生とお食事をご一緒する機会がありました。講演の前日であったにもかかわらずお時間を割いて交流の場を持っていただいたことに心から感謝し、あらためて心からお祝い申し上げます。